ICUサービスHPより |
新入生をうつくしい花で迎えた滑走路の桜並木も、新緑の頃をむかえ、すっかりそ
の趣を変えた。その桜並木を抜けると、姿をあらわすのが壁面に大きな十字をつけた
ICU教会だ。ふだんは大学のチャペルとして学生にはおなじみだが、ここは同時に教
会員の冠婚葬祭を司る大切な場所でもある。くしくも今月はジューン・ブライドの月。
そこで今回はICU教会での結婚式にフォーカスしてみようと思う。
ICU教会で挙式できるのは、新郎新婦の少なくともひとりがICUの関係者かICU教会員
であること、とされている。予約が多いためということもあるが、結婚式場ではない
ため、ICUにゆかりのない方に対して式を挙げる以上のことを提供できないから、と
北中晶子牧師は説明する。
それでは、いつごろから結婚式は行われてきたのだろうか。ICU教会が完成したのが
1954年。はっきりといつから式が行われたかは不明だが、1953年から二年間ICUで教
鞭をとった神学者エミール・ブルンナーが式を挙げたのがはじめてというから、ほぼ
教会完成と同時にはじまったと言える。時が経つにつれ、ノンクリスチャンのひとも
教会で結婚式をあげることがめずらしいことではなくなり、現在は一年に五十件程度
の式が行われている。つまりひとつき約四、五件。2010年からは学生食堂で結婚披露
宴を行うこともできるようになった。
今回取材をお願いした北中牧師は、ICU教会に赴任されて二年たつ。だが、ICUにい
らっしゃる牧師は宗務部の永田竹司牧師、ポール・ジョンソン牧師、そして教授であ
り牧師でもある先生方など数人であるため、北中牧師の担当された式の数は「数えき
れないくらい」。そしてその中で、考えさせられたことは“キリスト教とノンクリス
チャンの関係”だという。
北中牧師は、ICU教会に赴任されるまでノンクリスチャンのひとが教会で結婚式をあ
げるということにあまり触れたことがなかったそうだ。教会を模した結婚式場やキリ
スト教式の挙式には触れたことがあってもだ。だが、ICU教会で多くのノンクリスチャ
ンの挙式を挙げるうちに、“ノンクリスチャンの人に、キリスト教にたずさわる者と
してできることがあるんだ”と感じたという。
ところで、みなさんの中にはジューン・ブライドを夢見ている方もいるだろう。そ
のジューン・ブライドの大敵はなにか想像がつくだろうか。梅雨、である。雨が降っ
ているときにちょっとした問題になるのが、ブーケトスだ。晴天の場合は、式が終わっ
たあと教会のすぐ外で列席者が縦に並び、花嫁が教会の階段から花束を投げる…のだ
が、雨の場合はそうはいかない。しかたなく教会の入り口のちいさな屋根の下で、列
席者はところせましと横並びになる。当然花嫁のブーケトスは近距離だ。そういうと
きは必ずと言っていいほど笑いがおきるのだが、「それはそれでこじんまりとしてあ
たたかい感じで、いいですよ」と北中牧師はほほえむ。
最後に何か思い出のある式はあるか、という問いに、北中牧師はすこし考えたのち、
「べただけど、ひとつひとつ(の結婚式)いいんですよ」と答えた。だが、印象的だ
というのは、昨年の震災の影響で挙式を先送りにしていたひとたちの式。人生でほん
とうに大切なものはそれほど多くはない、そしてあたりまえに存在するものではない
という想いとともに一年をすごしてきたであろうひとたちの式だ。そんな彼らの式は、
ほかにもまして、いっそう深いものになるのだろう。
在学生であるみなさんは、すでにICU教会で結婚式を挙げる権利を手にしている。六
月のみどりの風のなかで、ほんのすこし先の未来を見つめてみるのもいいのかも、し
れない。
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